札幌市医師会

会員ログイン お問い合わせ
当会で開催した乳がん子宮がん検診普及啓発イベントの模様をお伝えいたします。
乳がん子宮がんについてはコチラ

講師
ソフィア北円山クリニック 所長
福井 里佳先生

講師
ともこレディースクリニック 院長
佐藤 智子先生

札幌市の乳がん検診・子宮頸がん検診の無料クーポンとは、どんなものですか?

乳がん検診の無料クーポンについてご説明します。4月1日現在40歳の方に7月頃送られるものです。 札幌市の乳がん検診を無料で受けられるというもので、マンモグラフィ検査、医療機関によっては触診もあると思います。
3月31日まで有効のクーポンで、有効期限が近づいてくるとクーポンを持って乳がん検診にいらっしゃる方も増えてきます。(無料クーポンは)大変いいものじゃないかなと思っております。

子宮頸がん検診のクーポンは、4月1日現在20歳の方に7月頃に送られて、使い始めるのは8月ぐらいになると思うんですが、年度事業で3月31日で終わってしまいますので(使用するには)ちょっと短い期間になってしまいますね。なかなかこのクーポンを使って受診される方が少ないのが現状です。
是非せっかくですから、無料なのでどんどん使っていただきたいです。婦人科の検診って、ちょっと恥ずかしいですけれども、デビューを果たしていただきたいと思います。

子宮頸がん/乳がん検診無料クーポン券/札幌市 (city.sapporo.jp)
子宮がん検診は大腸がん検査時のディスポパンツのような検査着が無いのはなぜですか?

そうですね。今まで、なぜ無かったのでしょうか。
図のように婦人科の検診って、内診台に座っていただいて、カーテンはあったりなかったりなんですけども、下半身を露出した状態でバスタオルをかけていただいたりするんですね。でもやっぱり露出している部分が多いので、いくつになっても何回受けても恥ずかしいわ、って方が多いですね。ついつい検診が遠のいてしまうっていう方もいらっしゃいますし、実際そういう声をたくさん頂戴しています。
最近は、ディスポタイプの検診パンツも入手できるようになりましたので、医療機関によっては、こういったものを採用しているところもあると思いますので、ぜひ活用していただいて婦人科受診のハードルを下げていきたいな、という風に思います。

乳がん検診は痛いという話を聞きますが本当ですか?

乳がん検診の中心となる検査が、マンモグラフィ検査というもので、皆さんよく聞いたことがあると思います。乳房を板のようなもので挟んで、レントゲンで撮るという検査方法です。板のようなもので圧迫する時に、やはり少し痛みが出る方がいらっしゃいます。人によって痛みの程度は様々で、閉経前の方は生理周期によっても、ちょっと違うと思うんですけれども、中には強い痛みを感じる方もいらっしゃいます。
ただ、この圧迫がなぜ必要か、と言いますと、乳腺の重なりをできるだけ伸ばして、病変や異常があった時に見つけやすいような写真になることを目的として圧迫しているものなんですね。検査としては非常に有効で、左右の見比べもできますし、二方向撮影することによって、病変や異常が見つけやすくなる、ということもあります。

先ほど、生理周期によってもちょっと違うと言いましたけれども、閉経前の方ですと、月経後に受けられると少し楽に受けられることが多いんじゃないかな、と思いますので、そういうことも気をつけていただけると少し抵抗がなくなるかな、と思います。

乳がん検診、子宮がん検診は何歳まで必要ですか?

乳がんの発症が多い年代というのはありまして、そのピークは40代から60代までなんですけれども、それ以降の70代、80代の方も最近非常に増えていまして、私が手術した最高齢の方は、もう100歳という方もいらっしゃるんですね。高齢であっても、まだまだ元気でいらっしゃる方は、手術した方が安心です。そんなに侵襲の大きくない手術でできる場合もありますので。ですから、私は、検診を受けられるのであれば、もう何歳まででも受けていただきたいという風にお伝えしています。

こちらにお示ししてますのが、2019年の子宮頸がんの年齢別罹患率です。罹患率というのは、初めて子宮頸がんと診断された方の数です。子宮頸がんは、20代の後半から30代、40代あたりにピークがあって、若い方に多いがんですが、その後徐々に患者数は低下していくんですが、70代、80代、90代、100歳以上でも、新規で子宮頸がんと診断される方がいらっしゃるわけです。福井先生もおっしゃたように、いくつになったらもう罹りません、という病気ではありませんので、いくつになっても受けていただきたいです。

そしてですね、子宮頸がんはヒトパピローマウイルスが原因でかかる病気なので、「私はもう30年も性交渉がないので、もうかからないです」っておっしゃる方がいらっしゃるんですが、実は一度感染したウイルスは体の中に潜んでいて、すぐには癌にはならないけれども、10年、20年、30年って、なが~い時間をかけて癌化していく場合があるんですね。ですから、もう何十年も性交渉がなくっても、子宮頸がんになるケースもありますので、やはり子宮がん検診は必要だと思います。

もし、がんと診断されたら、その後の生活はどうなりますか?

どのような治療を進めていくかという事を、その方の病状と生活状況ですとか、色々な要素を含めて考えて、最も良い治療方針を相談して決めていきます。やはり中心となるのは手術なんですが、今、乳がんというのはタイプ別に治療することになっていまして、そのタイプと進行度によって手術前に薬物療法という抗がん剤治療をすることがあったり、手術方法によっては術後に放射線治療をすることがあったり、再発予防の薬物療法があったりと、色々な治療を組合わせて、その方に最もあった治療方針を決めていきます。

例えば、手術前の薬物療法ですと、大体半年間ぐらいかかったりしますね。そして入院は、手術方法にもよりますけども大体1週間~10日間ぐらいかかります。
放射線治療は、手術の傷が落ち着いたら照射を始めて大体1か月ぐらいかかります。術後の薬の治療はですね、どのような治療になるかもよるんですけど、ホルモン剤の飲み薬だと5年、10年と飲むようなこともあります。

乳がん患者さんっていうのは、ご家庭でもお母さんだったり、奥さんだったり、親御さんの介護をしていたりと本当に役割の多い年代で、お仕事もされているような方がほとんどなんですよね。ですから、その役割とこの治療をどうやって両立させていくかっていう事が本当に皆さん悩まれるところであります。
やはり、治療っていうのは体の負担になる場合が大きいですので、それまでの生活ができるのかとか、仕事ができるのか、という事ですごく悩まれることも多いです。あとは体の変化があったり、本当に精神的にも負担を感じられる方が多いです。私だけじゃなく、看護師さんとか、あとはリハビリの方、薬剤師さんやたくさんの人の力を借りて支えあって、治療の経過が少しでも良くなるように、という風なサポートをさせてもらっています。

子宮頸がんの治療は進行期によって全く違います。前がん病変の高度異形成ですとか、がんでも上皮内癌という粘膜にとどまっているような癌で妊娠を希望される場合、子宮を残したい方の場合は、子宮を取らずに子宮の入り口を円錐状にくり抜く手術、円錐切除術を行います。医療機関によっては日帰りでやっているところもありますし、大体1泊2日ぐらいが多いんじゃないかと思うんですけども、術後に出血が見られたりすることもありますし、退院してすぐに通常の生活には戻らないこともあるんですが、体への負担は少ない治療と言えると思います。

ただ、せっかく子宮を残したんですけれども、子宮の入り口が短くなってしまいますので、妊娠しても流産とか早産に至るケースもあります。また、せっかく妊娠したくて残したのに入口が短くなったことが不妊の原因になってしますこともありますね。
ですから、本当はこの円錐切除もしなくて済む程度の、もっと早い異形成っていうグレーゾーンの軽いようなタイプであれば、子宮の入り口をレーザーで焼くだけで終わってしまうということもあります。それこそ、本当に日帰りでできる手術で、後々いろんなリスクがなく受けられる治療ですので、本当に早く見つけることが大事だと思います。

初期のがんでも、お子さんがいらっしゃって、私は子宮全摘で構わないですっていう方はの場合には、単純子宮全摘をする場合がありますけども、入院が大体1週間ぐらいですね。最近は腹腔鏡っていうバッサリ切らないで、小さな穴を開けて取る手術をやっています。

進行したケースでは図にありますように、子宮を取るだけではなくて、基靭帯と言われる子宮を支えている組織ですね、ここを広く取ったりリンパ節をたくさん取ったりしなきゃいけないので、手術も時間がかかりますし入院期間も2~3週間と長くかかってしまいます。
術後のいろんな後遺症、合併症も見られまして、よくあるのは下半身のリンパ浮腫ですね。それと尿を出す神経が少しダメージを受けて排尿障害を起こしたり、あと便秘とか腸閉塞とかになってしまったりしたケースもあります。卵巣まで合わせて取った場合には、いきなり更年期の症状に悩まされることもあります。

手術だけで治療を終えられないような更に進行したような場合は、合わせて放射線治療をしたり、抗がん剤の治療もしたりすることがあります。放射線をしますと短期的な副作用としては、吐き気があったり、体がだるくなったり、照射した部位の皮膚が炎症を起こしたり。抗がん剤を使うと吐き気もでますし、女性にとっては辛い脱毛とかですね。手足のしびれといった、長く残ることがある末梢神経障害が見られることがあります。
とにかく、早く見つけて早く治すということがポイントになってきます。

自分で異変に気づく方法はありますか?

これまで、乳癌の早期発見のために、自己検診(自分で乳房を触診すること)をしましょうということが言われてきました。それが最近になって、自己検診は不利益が多く、利益は少ないということがわかってきました。自己触診や自己検診という言葉は、一般女性には荷が重く、面倒に思われたり、正確に実践する女性も少ないようです。そのため現在では、『ブレストアウェアネス』という考えが提唱されています。
 1、 ご自分の乳房の状態を知る
 2、 乳房の変化に気をつける
 3、 変化に気づいたらすぐ医師へ相談する
 4、 40歳になったら2年に1回乳癌検診を受ける
以上の4つのポイントを意識する生活習慣をもつと良いと思います。

詳しくは、下記のサイトを参考にしてください。
https://brestcs.org/information/self/

子宮頸がんなんですけれども、残念ながら初期の癌の場合は全く自覚症状はありません。先ほどからお話に上がりますけれども、初期に見つけるのは症状のないうちに検診で見つけていただく必要があります。

残念ながら検診の機会がなくて進行が進んでしまいますと、よくある症状は月経じゃないのに出血する、あと多いのは性交渉の時の出血ですね。あとは茶色っぽいおりものと、膿のようなドロっとしたおりものが出てきたり、水っぽいおりものが流れるように出てきたり、粘液が出てきたり。

さらに進行するとお腹が痛い、腰が痛いといったような症状がきます。
よく「腰が痛いなら婦人科が悪いんじゃない?」っていう言葉をよく耳にしますが、これはもうかなり進行した状態なんですね。自覚症状が無ければ定期検診で見つかり子宮を残すことができるけれども、症状が出た方はもう進行していますので、子宮を全部取らなければいけない、もしくはさらに追加で放射線治療とか抗がん剤を使わなければいけないので、本当に検診が大事ですね。定期的にぜひ検診を受けてください。